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ウォンテッドリーのデータサイエンティストが今後取り組む主要課題

Photo by x ) on Unsplash

はじめに

ウォンテッドリーでデータサイエンティストとして働いている市村です。ウォンテッドリーのデータサイエンス組織はこれまで、推薦システムの開発事例や成果を学会やイベント、ブログなどで多く発信してきました。一方で、チームがこれから取り組む課題といったような、未来の話について焦点を当てる機会は多くはありませんでした。

この記事では、ウォンテッドリーのデータサイエンス組織について紹介した上で、チームの今後の展望についてお伝えします。私たちの取り組みに興味をお持ちの方に、チームの考えや雰囲気、そしてこれからどんな挑戦に向き合おうとしているのかを感じ取ってもらえると嬉しいです。

目次

  • はじめに

  • チームについて

  • チームの今後の取り組み

  • 方向性

  • 課題1. ユーザーの最適挑戦につながる推薦の実現

  • 課題2. 非構造データを活用した推薦の高度化

  • 課題3. LLM × 推薦システム

  • 課題4. 生成 AI を活用したコンテンツ作成の支援

  • 課題5. Wantedly Visit 以外のプロダクトにおける推薦体験の導入

  • 課題6. データ分析による社内業務の最適化・効率化

  • こんな人と一緒に働きたい

  • おわりに

チームについて

ウォンテッドリーでは現在、4名のデータサイエンティストが Visit Recommendation Squad というチームに所属し、会社訪問アプリ「Wantedly Visit」の推薦システムの開発と運用を担っています。

Wantedly Visit は、会社と働く人がミッションやビジョンへの“共感”でマッチングすることを目的としたサービスです。ユーザーと企業がお互いに魅力的に感じられるマッチングを生み出すことが、プロダクトが提供するコアな価値です。

2025年現在、Wantedly Visit には400万以上のユーザーと4万社以上の企業が登録しています。このような規模のプラットフォームでは、企業が自社に合った候補者を、ユーザーが自身に合った仕事を、自力で見つけ出すのは困難です。この環境下で、いかにして良質なマッチングを構造的に生み続けることができるかが、プロダクトの価値を左右します。

こうした課題感から、私たちのチームは「データの力で理想的なマッチングを」というミッションを掲げ、推薦システムを中心としたデータ分析技術でこの課題に取り組んできました。

推薦システムが Wantedly Visit にどう貢献しているかや、データサイエンティストの業務内容については、過去にブログで紹介しています。詳細はこれらの記事もぜひご覧ください。

なぜ Wantedly に推薦システムが必要なのか | Wantedly Engineer Blog
こんにちは。ウォンテッドリーで Data Science Tech Lead をしている合田です。この記事では、ウォンテッドリーのデータサイエンティストが開発している推薦システムについて紹介しま...
https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/465747
ウォンテッドリーにおける推薦システム開発の流れ | Wantedly, Inc.
はじめにこんにちは、ウォンテッドリーの合田(@hakubishin3)です。私は推薦チームに所属していて、機械学習領域のテックリード兼プロダクトマネージャーとして会社訪問アプリ「Wantedly...
https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/864502

チームの今後の取り組み

方向性

これまで私たちは Wantedly Visit の推薦システムの開発に注力してきました。しかし、理想的なマッチングを実現できているとはまだ言えず、依然として多くの課題が残っています。

また、会社の事業領域の拡大や AI 技術の発展により、データサイエンティストが解決すべき課題や技術的に貢献できる領域は拡大しており、既存の「Wantedly Visit × 推薦」以外の領域での活躍も求められています。

例えばプロダクトの観点では、Wantedly Visit に加え、採用管理システムである「Wantedly Hire」や、福利厚生サービス「Perk」など、「はたらくすべての人のインフラ」となるべく複数のプロダクトを展開しています。これらのプロダクトに対しても Wantedly Visit で培ったチームのケイパビリティを応用し、データ分析を通じた価値提供を広げていく必要があります。

また技術の観点では、生成AIや大規模言語モデルの発展を背景に、データサイエンティストが技術的に解決できる課題が着実に増えています。

まとめると、既存領域である「Wantedly Visit × 推薦システム」の深化を軸に置きつつ、プロダクト軸・技術軸で新たな価値創出を進めていくことが、データサイエンス組織のこれからの方向性です。

以下ではデータサイエンティストが今後取り組んでいく技術課題の一部を紹介します。

課題1. ユーザーの最適挑戦につながる推薦の実現

私たちのミッションは「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」です。適材適所、すなわち人と仕事の適切なマッチングの実現には、ユーザーにとって、簡単過ぎず、難し過ぎない適度な挑戦となる仕事との出会いが不可欠です。このような挑戦を私たちは「最適挑戦」と表現しています。

最適挑戦につながる出会いを実現するためには、ユーザーのスキルや仕事を行う上での特性などの情報の理解が鍵となります。このような背景から、ウォンテッドリーは2023年にスキル診断を、2024年に性格診断をリリースしました。2025年5月の現時点で累計15万人を超えるユーザーがこれらの診断ツールを利用しており、関連データが蓄積され始めています。しかし、これらのデータはまだ十分には活用されていないのが現状です。

Wantedly Assessmentの利用者数が15万人を突破! | Wantedly, Inc.
ウォンテッドリーでは、自己理解を深め、強みを伸ばす診断ツール「Wantedly Assessment(ウォンテッドリー アセスメント)」を提供しています。この度、同ツールの利用者数が15万人を突...
https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/970506

こうしたデータを用いて「ユーザーにとっての次の挑戦」を予測するというチャレンジングなタスクに取り組み、ユーザーの「ココロオドル」仕事との出会いの実現を目指します。

課題2. 非構造データを活用した推薦の高度化

これまでの Wantedly Visit における推薦システムは、主にユーザーや企業の行動ログや属性情報といった構造化データを主に用いて構築されてきました。

一方で、Wantedly には以下のようなリッチな非構造データが数多く存在します。現状では、これら非構造データを推薦に活用しきれていないのが実情です。

  • プロフィールや会社・募集の情報といったテキスト情報
  • ユーザーや企業間のつながりに関する情報
  • 会社・チームの雰囲気といった、言語化が難しい情報を伝える募集の画像情報

今後は、深層学習や自然言語処理などの技術を活用し、非構造データからユーザーの嗜好や価値観を抽出・利用することで、さらなる推薦精度の向上を目指します。

課題3. LLM × 推薦システム

大規模言語モデル(LLM)の発展により、推薦システムにも新たな可能性が開かれつつあります。特に、LLM が持つ外部知識や文脈理解の能力を活用することで、テキストデータの情報を、より深く理解したり、補完したりすることが可能と考えています。例えば以下のような応用が考えられます。

  • ユーザーの自由記述プロフィールから、スキルや志向性を言語的に抽出する
  • 情報が不足するコンテンツに対する、LLM による補完表現を生成する
  • LLM による埋め込み表現を推薦で利用する

また、推薦およびその周辺タスクそのものを LLM で直接的に行う、生成的推薦(Generative Recommendation)の実現可能性についても検討を進めていきたいと考えています。

こうした LLM の持つケイパビリティと、既存の Wantedly の推薦システムを組み合わせることで、推薦精度の向上を実現していきます。

課題4. 生成 AI を活用したコンテンツ作成の支援

Wantedly Visit では、ユーザーや企業が作成するプロフィールや募集情報などのコンテンツが、マッチングの出発点となります。

魅力的なコンテンツが増えることで、ユーザーと企業の相互理解が深まりマッチングが生まれ、さらに利用が増える、というプロダクトグロースの好循環が生まれます。

一方で、こうしたコンテンツの作成には一定の負担が発生するのも事実です。そこで生成 AI などの技術を活用し、コンテンツ作成の負荷を軽減する支援を提供することで、コンテンツを通じたマッチングや認知形成の向上に貢献していきます。

課題5. Wantedly Visit 以外のプロダクトにおける推薦体験の導入

ウォンテッドリーは、Wantedly Visit 以外にも「はたらくすべての人のインフラ」となる複数のプロダクトを展開しています。例えば、福利厚生サービスの Perk や採用管理システムの Wantedly Hire がその例であり、いずれも Wantedly Visit に次いで事業を支える第2、第3の柱として成長中です。

こうしたプロダクトの成長を支えるために、データサイエンス組織のケイパビリティを横展開していくことが求められます。例えば Perk では、提供サービスのジャンルや件数が増える中で、ユーザーが自身の嗜好に合うアイテムを発見しやすくするために、推薦や検索といった体験の導入が重要なテーマになると予想しています。

このように、これまで Wantedly Visit を中心に磨いてきた推薦システムやデータ分析の知見を他プロダクトにも応用することで、より広い領域での価値提供と事業成長への貢献を目指します。

課題6. データ分析による社内業務の最適化・効率化

プロダクトを通じたユーザー向け機能の提供に加えて、社内業務そのものにも効率化・最適化の余地は数多く残されています

例えば以下のような業務が考えられます。

  • 営業・マーケティングにおけるリソース配分の最適化
  • スパム検知やコンテンツモデレーションによる、プラットフォームの信頼性担保
  • 社内に蓄積されたドキュメントやナレッジの活用

これらの業務に対して、LLMやデータ分析技術を活用することで、属人性を減らし、意思決定や情報活用をよりスムーズにしていくことが可能です。プロダクトのみならず、組織全体の生産性を高めるデータ活用にも挑戦していきます

こんな人と一緒に働きたい

ここまで、ウォンテッドリーのデータサイエンス組織のミッションや今後の挑戦について紹介してきました。この記事で触れられなかったものも含め、私たちのチームにはまだまだ多くの挑戦と取り組むべき課題があります。

一方で、現在のデータサイエンティストは4名。挑戦したいことに対して、まだ手が足りていないという状況です。だからこそ今、新たなチャレンジを共にできる仲間を探しています

私たちは、データサイエンティストとしての専門性だけでなく、日々の仕事にどう向き合うかという姿勢や価値観も大切にしています。

まずは開発組織として重要視しているカルチャーに、共感してくれる方と働きたいと考えています。データサイエンティストに限らず、開発組織全体として以下のような文化を共有しています。

  • 最初から最後まで
  • データドリブン
  • Code wins arguments
  • Why から始める

詳細については、Wantedly engineer のブランディングページもぜひご覧ください。

そしてもう一つ、私たちが大事にしているのが学びへの意識です。施策を通じてユーザーに価値を届けることはもちろんですが、それと同じくらいにその過程から学びを得ることに強くこだわっています。

施策の結果の数字だけにとらわれず、そこで得られた気づきや学びを次に活かしたり、学びをメンバー間で共有して組織としての知を蓄積していくことに重きを置いています。実際にチームでは、週次で各自が試した実験を共有する場を設けていたり、得られた知見を社内・社外を問わずに積極的に発信したりしています。そんなサイクルを回していける方と、一緒に成長していけると嬉しいです。

おわりに

私たちは推薦という Wantedly Visit にとって欠かせない技術を軸にしながら、中長期的な価値創出に向けて新たなチャレンジを続けていきたいと考えています。ただ、そのためにはまだまだ仲間が足りていない状況です。

もしこの記事を読んで少しでも興味を持たれた方、ぜひ一度カジュアルにお話ししませんか?現時点で転職を考えていない方でも大歓迎です。私たちの取り組みや課題感を、より詳細にお話できたら嬉しいです。

ご興味をお持ちいただけた方は、下記の募集ページからどうぞお気軽にご連絡ください。

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